一般歯科 (虫歯の治療)
『虫歯=感染症』
虫歯は「細菌が歯で増殖し、その細菌が発する酸によって歯が溶ける病気(=感染症)」です。症状が進行すると痛みを伴いますが初期は痛みがありません。また、虫歯は進行性の病気で自然治癒しないため、感染部分を削り取って人工材料で修復する必要があります。当院は、患者様の大切な歯をできる限り削らないために下記のような考え方で治療を行っています。
◆虫歯進行の評価指標
- 【C0】表面が少し溶けて(脱灰)いるが穴は開いていない状態
- 【C1】歯が溶けて穴が開いているが「エナメル質内」までの状態
- 【C2】虫歯がエナメル質を越えて「象牙質内」に到達している状態
- 【C3】さらに虫歯が進行し、「歯髄」まで届いてしまっている状態
- 【C4】歯冠(歯の頭)が崩壊し、歯根(歯の根)だけが残った状態
皆さんは学校健診などで「C1、C2…」など耳にした経験があると思います。歯の頭の部分(歯冠)は、一番外側に「エナメル質」その内側に「象牙質」さらに内側に「歯髄(歯の神経と呼ばれる部分)」があり、虫歯の進行度合いによってやるべき治療は変わります。
C3以降は、神経まで虫歯が届いてしまっている状態なので、ほとんどの場合「根管治療」と呼ばれる歯の神経の専門治療が必要になりますので、ご興味のある方は「根管治療(マイクロスコープ治療)」のページもご覧ください。
初期虫歯は経過観察します
歯垢の中にいる虫歯の菌は、食べ物に含まれる「糖分」を栄養源にして増殖し、酸を産生(歯を溶かす)します。ですが菌が歯にくっつくことや、糖分を栄養源に酸を作るには「時間」が必要です。
つまり「菌が歯にくっついている時間」や「糖分を栄養源にする時間」があまりなければ、酸を作れないので歯を溶かすことはありません。この2つの時間を短くすることが、「歯磨き」の(虫歯に対する)目的です。
当院では、歯磨きが可能な虫歯であれば、むやみに削ることはしません。
C0や一部のC1の状態であれば、歯磨きを丁寧にしていただくことで進行を妨げることができるからです。
虫歯進行度の見分け方
当院は歯をなるべく削らないために、磨くことが可能な部位や形態であれば、歯を削ることはありません。その代わりに歯磨き方法の指導を行っています。しかし「虫歯の細菌が住んでいるところまで歯ブラシが届かない状態」の虫歯は、物理的に削りとる必要があります。
歯を削る必要があるかどうかは、歯並びや虫歯のできた場所によっても変わってきますが、「虫歯の深さ」が重要な要素です。虫歯の深さ(進行度)を診査するためには
- ①視診(実際に歯を見る)
- ②レントゲン検査(レントゲン写真で見る)
- ③触診(細い針で歯を触る)
- ④切削診(実際に削ってみる)
などの方法がありますが、どれも単体では不確実だったり歯が傷ついたりする方法です。当院では、視診やレントゲン検査に加えて、レーザーを歯に当てて虫歯の深さを数値化する装置(ダイアグノデントペン)を必要に応じて使用しています。
このダイアグノデントペンの優れているところは
- ★歯を傷つけずに診査
- ★虫歯進行度を科学的に把握
できるという点です。ダイアグノデントペンで出た数値を数ヶ月後または数年後にもう一度計測して数値を比較し、もし進行していなければ「管理できている虫歯だから削る必要はない」と判断します。歯は一度削ってしまうと元には戻りませんので非常に画期的な装置だと言えます。
たしかにレントゲン検査でも大きな変化や虫歯の進行の形はわかりますが、ミリ単位での進行度合いを正確に見るのは難しいという特徴があります。一方でダイアグノデントペンは虫歯の進行の形や周囲組織との位置関係はわかりませんので、当院では虫歯の症状に応じて使い分けています。
必要最小限しか削らない
このように削らなくてもいい虫歯もありますが、削らなくてはいけない虫歯も多数存在します。歯を削って治療する際に下記の3点が重要です。
- ①確実に虫歯(細菌)を取りきること
- ②必要最小限だけ歯を削ること
- ③削った部分を確実に封鎖(修復)すること
◆確実に虫歯を取りきるために
顕微鏡(マイクロスコープ:20倍以上)や拡大鏡(ルーペ:3倍から8倍)を用いてよく観察することが必要です。健全な部分と虫歯になっている部分は、非常に見分けづらいものです。虫歯(細菌)を取り残すと、そこから再度虫歯が進行しますので、当院ではほぼ全ての治療でマイクロスコープやルーペを使用し、よく観察しながら治療を進めていきます。
◆歯を削りすぎないために
「齲蝕(うしょく)検知液」という虫歯に特異的に反応(色がつく)する薬で染め出し、虫歯の部分だけを慎重に削ります。この薬で染め出した虫歯も肉眼だけで確認するのは非常に困難です。そのためマイクロスコープやルーペの使用が効果的です。
削った部分を修復する方法は、いくつかありますが最近の治療では「合着」よりも「接着」ということが、よく言われています。この「接着」は、近年の歯科治療で大きく進歩した技術です。最後に「合着」と「接着」に関してご説明いたします。
合着とは?
主に金属と歯をくっつける原理で「被着面(金属と歯)の凸凹に材料(セメント)が入り込んで固まる」ことです。つまり「歯」と「セメント」と「金属」が摩擦力ではまっているだけ(機械的)です。金属や、特にセメントが劣化することで隙間ができ、そこに細菌は侵入します。金属が脱落した歯は、残念ながら再度虫歯になっていることがほとんどです。
接着とは?
主にセラミックやコンポジットレジンと言われる材料と歯をくっつける原理で「被着材と接着材の化学的な結合」のことです。セラミックはレジンセメントという接着材を介して歯に接着されます。コンポジットレジンは直接歯に接着します。確実な接着が実現すればセラミックやコンポジットレジンが歯と一体化するので隙間から細菌が侵入することはありません。
セラミックを使用した治療では、万が一セラミックが脱落した場合でもレジンセメントが歯と接着しているので、再度虫歯になっていることは非常に少ないです。コンポジットレジンは歯に直接接着するので型取りの必要もなく歯を削る量も最小限ですみます。多くのケースで健康保険での治療が可能で患者さんにも喜ばれる治療法ですが、以前よりかなり向上したとはいえ物性がそこまで強くはないので、使用するケースは慎重に選ぶ必要があります。
ご相談にお越し下さい
歯の崩壊は虫歯から始まります。これ以上できるだけ歯を痛めないようにするために虫歯の治療はなるべく早めに対処することが非常に重要です。当院では様々な選択肢の中から、一人一人の患者さんにとって最適な治療を一緒に考えていただきたいと思っていますので、まずはしっかりとお口の中の状態を拝見させて頂きますので、ぜひ一度当院にお越しください。